今回は、高齢化する現代の出産事情において、切っても切れない話題である『出生前診断』についてお話ししたいと思います。
出生前診断とは
そもそも、出生前診断って何なの?って方もいると思います。
特に、妊娠出産は女性なら誰でもできるとか、結婚したら子供がいるのが当たり前とか、そういう当たり前の生活が、当たり前に自分や周囲に待っていると思っている人にこそ、一度考えてみてほしい話題です。
出生前診断とは、文字通り出生前に胎児の先天性疾患の有無を調べる検査をし、医師が診断を行うことです。
これには、母体から血液や羊水を採取して、染色体異常による疾患を調べるものと、超音波(エコー)で見て、形態的異常による疾患を調べるものの大きく分けて2通りの方法があります。
いずれも基本的には妊婦本人の希望に則って行われますが、産院によっては超音波スクリーニング検査が必須になっている所もあります。(めりーの産院は必須でしたが、検査結果を詳しく聞くか否かは妊婦次第でした。)
詳しい検査の種類や時期などが知りたい方は、『出生前診断』で検索すると病院のリンクなどが沢山出てくるので、見てみて下さい。
これらの検査の目的は、出産前に胎児の状態を把握することで、産後の赤ちゃんのケアを迅速に行ったり、妊娠中に対応可能な病気であれば対応したりするために行われるのですが、この検査による結果が思わしくなかった場合、大きな悩みを抱えることにもなります。
めりーと出生前診断
出生前診断への個人的考え
めりーが出生前診断の存在を知ったのは、婚活を始めたときに読み漁った婚活経験者の体験談でした。
その人は男性でしたが、自分が若くないのもあって、婚活中から「妊娠したら出生前診断を受けてほしい」という話をしているが、非常識だろうか?というような内容だったと思います。
これで、出生前診断って何だ?となった私は、調べまくります。
それによって知ったのは、これがあれば私の不安が一つ消える、という事でした。
私が婚活していた時の最大の不安は、子供についてでした。
自分が三十路を過ぎたのもあって、幸運にも妊娠できたとして、授かった子に先天性の異常があったら、というものです。自分にそんな子を育てるだけの金銭的、体力的、精神的なキャパシティがないことはわかっていましたし、何より、その子がもし知的な障害を持っていたらと考えると、恐怖しかありませんでした。
それというのも、学生時代に学年の違う知的障害のある男子に抱き着かれたり、バスで乗り合わせたそういった男性に追い掛け回されたりした経験があり、意識しないようにしていても街中で見かけると心身ともに緊張してしまうのです。
そんな状態でそういった子を育てられるはずもなく、何とか育てられたとしても、もしその子が私がされたことと同じことを、他の女の子にしてしまったらと考えるだけで、恐ろしかったです。
そのため、旦那にも2回目のデートの時に上記のことを踏まえて、そうなったら自分は産めないことと、あなたが望むのなら産むが、産後の子育てには協力できないことを伝えていました。
すごく身勝手だとは思いますが、出産なんて親の身勝手でするようなものです。
親が子供を欲しいから、産みたいから産むのであって、子供が事前に意思表示をしたわけではありません。
出生前診断をもとに中絶することに、難色を示す人が多いのも知っていますが、命がけで産むのも、人生をかけて育てるのも、全部私自身であって非難してくる人たちではありません。
どうせ身勝手なら、とことん貫いてもいいんじゃないかなって。
自分の人生は自分だけのもです。
選べる未来があるなら、より後悔しない未来を選びたいのです。
出生前診断(NIPT)の受診
1年以上の妊活を経て妊娠した私は、希望通り出生前診断を受けるべく、いつも通り検索しました。
その結果、数ある出生前診断の中でもNIPTという診断方法なら、母体の血液を採取し診断するという一番簡単で、診断結果も不確定ながら99%以上の正確性を持つということで、これにしよう!と決めました。
早速、主治医に相談すると、以下のようなざっくりとした説明を受けました。
- 国内に認可された施設は限られること
- この病院からは、特に紹介などは行っていないこと
- 不確定診断のため、確定には流産の危険のある羊水検査や絨毛検査を受けなくてはならないこと
出産数が多く、不妊治療外来のある病院だったので、検査も紹介も行っていないのは意外でしたが、逆に好きな病院を自分で選んでいいとのことだったので、気楽でした。
県内にある認可を受けている病院を教えてもらい調べてみると、かなり面倒くさいことが判明。
その前に、そもそも認可施設で検査を受けるためには、以下のような条件があることも分かりました。(めりーは1つ目をクリアしているため、説明がなかったものと思われます)
- 出産時の年齢が35歳以上
- 染色体異常のある子の妊娠、出産経験がある
- 胎児の染色体異常が疑われる、または確定されている
- 両親のいずれかが、染色体異常の保因者である
以上のいずれかの条件をクリアして、初めて認可施設での受診が可能となります。
で、めりーが認可施設を選ばなかった理由が、下になります。
- 夫婦そろって面談やカウンセリングを受けたうえで、検査に臨まなくてはならない
- 検査に関わる通院は最低3回で、すべて平日(スケジュール的に半休では無理)
- 病院まで、電車とバスを乗り継いで2時間以上かかる
- コロナ下ということもあり、人数制限をしているので予約が取れるかどうかわからない
人の命がかかっている問題なので、ある程度面倒くさいのは仕方ないにしても、検査結果によっては諦めようと思っているので、予約が取れないのは困るし、旦那が忙しいのもそうだけど、自分も有給がギリギリで平日に3日も休めない。
そもそも、前の子を流産したのもあって、今回の妊娠確定に主治医が慎重で、そろそろ10週になってしまうから、2週間以内に検査をしたい。
そこで私たち夫婦は、認可を受けている病院と費用が大差なく、土日祝日や18時以降も検査を受け付けている無認可の病院に行くことを決めました。
早速土曜日の空いている日程で予約を取り、検査に必要な血液を採取してもらい、いくつかの注意事項と確認事項をお医者さんとして終了です。
所要時間は1時間無いぐらいで、結果も郵送で送ってもらうことにしました。
ここで、めりーが受けた無認可の出生前診断についてまとめておきます。
概要
- 通院 →説明と採血含めて一回のみ
- 受診日 →土日も可能
- 費用 →病院によってピンキリ。私が受けた所は認可施設と同じ基本検査は約10万円。全染色体+微小欠失で約18万5000円。
- 受診条件 →特になし
- 結果到着までの期間→実施した検査によって異なる(10~14日前後)
- 結果通知 →メールと、追加料金がかかりますが郵送も有
- アフターフォロー →結果が陽性の場合、他院での確定診断のための羊水検査費用を実費負担(上限有)
検査までの流れ
- 申し込みフォーム、または電話にて病院に連絡を入れる。
- 妊娠週数を確認のうえ、こちらの希望をもとに検査日程の打診をしてくれるので、都合のいい日で検査を決める。
- 予約当日に、申込書、同意書、医師の問診があり、採血を行う。
- お会計(カード決済可)を行い帰宅。
このように、認可施設で受けるものよりも、かなり簡素な流れになっています。
検査機関も、海外の業者への委託となりますので、申込書も結果も当然英語で来ます。
もちろん、どちらにも和訳はついてくるのですが、結構不安だったのを覚えています。
受診条件を満たしていて、無認可や海外への委託、カウンセリングや結果の詳しい説明の有無などを気にされる方は、時間と手間がかかりますが、国内の認可施設での受診をお勧めします。
認可施設での受診条件を満たしていない、スケジュールや居住地の問題から認可施設が難しいという方は、無認可の施設でもいいと思います。
ただし、出生前診断そのものについてや、陽性だった場合のことなど、カウンセリングがない分、夫婦での話し合いや下調べがとても大切です。
きちんと話し合っておきましょう。
検査結果
検査日から2週間が経ち、待ちに待った検査結果がメールにて届きました。
無事、全項目陰性でした!
旦那と何度も何度も見返して、和訳もついているのに、それさえも疑って辞書を引っ張り出して確認しました。
心の底から安心しました。
もちろん、NIPTは不確定診断のため、1%以下の確率で陽性の可能性もありますし、遺伝子検査が異常がなかっただけで、身体的な異常がないわけではありません。
それでも、私が一番恐怖していた項目が高確率で陰性だったことで、あとは出産まで妊娠が継続できればいいねと、残る流産と1パーセント以下の陽性への不安を抱えながら、ひとまず胸をなでおろしました。
もう一つの出生前診断
超音波スクリーニング
遺伝子による出生前診断が終わったところで、もう一つの出生前診断が待ち受けていました。
私のお世話になっていた産院は、エコーによるスクリーニングが必須となっており、事前アンケートで異常が見つかった場合、聞きたいか否か、聞くにしても詳細を知りたいか否かを細かく聞かれます。
出産してから異常を知るとか怖すぎたので、包み隠さず全てを知っておきたかった私は、丸っと全部教えてください!と書いておきました。
そして行われたスクリーニング。
行われるのは知っていましたが、事前にスクリーニングの説明があると思っていためりー。
何の説明もないまま始まってたらしく、なんか今日のエコーはずいぶん長いし、じっくり見るし、4Dすげ~と思ってはいましたが、エコー後の診察時にスクリーニング検査であったことを聞かされ、ちょっと納得。
そして、担当の先生が話し始めたのですが、なにやら言い淀んでいるというか、前置きが長い。
アンケートの内容から始まって、全部知りたいって言ってたよね?言っちゃうよ?言っちゃうよ?的な感じで聞かされた結果は、先生の気遣いに首をかしげるぐらい、落ち着いて受け入れられるものでした。
もう一つの検査結果
「口唇口蓋裂の可能性があります」
先生からそう言われた瞬間、昔テレビのドキュメンタリー番組で見た、発展途上国の子供の姿が思い浮かんできた。
ぱっくりと割れた上唇と上顎は痛々しくて、けれど番組の主役である発展途上国を回っている医師曰く、珍しくない先天異常で、手術を重ねればきれいになるという事だった。
もちろん、その医師に彼を継続的に治療する暇も、彼自身にそれを現地の病院で受けるだけのお金もないため、一度の手術でできるだけ、せめて生活への支障が少なくなるところまでしかできないという話だった気がする。
でも、それはつまり、望めば医療が受けられるこの日本でなら、あの医師の言う通りきれいに治るということだ。
それなら、何の問題もないじゃん。という結論に至り、この病気を知っているかとか、口唇はエコーで確認できたが、口蓋は産後の確認になるとか、かなり慎重な口調で言われ、あっけらかんとした私との温度差半端なかった。
お気遣い、痛み入ります先生。
診察室から出ると、たまたま同行してくれていた旦那に、すぐに検査結果を報告。
ありのままを伝えると、なんだ、それ?という感じのリアクションを頂いた。
そこで初めて、担当医の言い淀んだ理由が分かった。
なるほど、確かに。
病名自体知らなくて、治ることも知らなかったら、子供の口も、場合によっては顎も縦に裂けちゃってますよとか言われたら、パニックですよね。
私があっけらかんと説明したせいか、旦那もあまりネガティブな印象を持たなかったようで、治るならいいんじゃない?俺も協力するから、二人で頑張ろう、と仰っていただき、やっぱりこの人と結婚してよかったと再確認したのでした。
最後に
今回は、かなり賛否の分かれる内容だと思います。
出生前診断について軽く考えすぎとか、命の重さがとか、色々な意見があって当然です。
今回のことで、私が一番伝えたいのは、
出生前診断を受ける前に、陽性だったらどうするのかを夫婦でしっかり決めておく
です!
事前に決めておいても、いざ陽性となったらすごく動揺してしまうかもしれませんし、決めていたことを覆したくなるかもしれません。
私自身、身体的な先天性異常だったら産もうと決めてはいましたし、旦那ともそう話してきましたが、時折不安になる事もありました。
「今の医学なら大丈夫。」
「たくさんの成功例があるから大丈夫。」
「NIPTの精度は99%以上だから大丈夫。」
「内臓や他の体の部分には、異常がないから大丈夫。」
「旦那も一緒に頑張ってくれるから大丈夫。」
そうやっていくつもの【大丈夫】を積み重ねて、旦那や担当の先生からも沢山の【大丈夫】をもらって、ネガティブになりすぎることなく出産を迎えることができました。
まぁ、出産後も悩みや不安は尽きませんが、それはどのお母さんもそうなんだろうと思います。
出生前診断(NIPT)を受けてみて、子供を産むという事への不安や恐怖が和らいだし、口唇口蓋裂の約30%にみられる合併症のうち、遺伝子異常の物はないと分かっている安心感もあります。
高額ではありますが、異常ありの子が生まれた後の費用を考えると、少ないと思いますし、長い妊娠期間を不安にさいなまれずに過ごせたので、受けてよかったと思います。
日本でもこの検査が、手軽に手ごろに受けられるようになって、当たり前の選択肢の一つとして利用できるようになったらいいなと思います。